2025年5月30日、伝説のバンドGrateful Deadは、その長大で奇妙な旅路の新たなスナップショットを私たちに示してくれました。60枚組という巨大なライブ集『Enjoying the Ride』から厳選された、3枚組CDまたは6枚組LPの最新ライブ盤『The Music Never Stopped (Live)』がリリースされたのです。
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1969年から1994年までの25年間にわたり、20もの伝説的な会場で録音された「ほぼすべてが未発表」の音源たち。この作品は、
「まるでサーカスに参加して旅をするような」
──バンドのアーカイブ担当デヴィッド・レミューへのインタビューより
体験への最高の招待状と言えます。
この記事では、Grateful Deadのライブがなぜ「旅」と称されるのか、そしてこの最新ライブ盤が、その旅への最初の一歩としていかに最適な入門セットであるかをご紹介します。
Grateful Deadとは？—“旅と即興”を体現する伝説のライブバンド
Grateful Deadというバンドを理解する上で欠かせないのが、「旅」と「即興」という二つのキーワードです。1965年の結成以来、彼らは決まりきったスタジオ録音の再現ではなく、ライブのその瞬間に生まれる音楽を何よりも大切にしてきました。
サンフランシスコのサイケデリック文化の中から生まれた彼らは、ブルース、フォーク、カントリー、ジャズといったアメリカのルーツミュージックを根幹に持ちながら、長大なジャムセッション（即興演奏）を通じて、それらを未知の領域へと昇華させました。
毎回異なるセットリスト、同じ曲でも全く違う表情を見せる演奏――彼らのライブは、一回一回が予測不能な冒険であり、バンドとオーディエンスが一体となって創り上げる一期一会の「旅」なのです。この『The Music Never Stopped (Live)』は、そんな彼らの終わらない旅の、輝かしい瞬間を集めた音の地図と言えるでしょう。
初心者向けガイド｜まずはこの3曲から体験しよう名演20会場から選出された「名所×名曲ツアー」
本作には、バンドの歴史を彩った20もの会場から、珠玉のパフォーマンスが1曲ずつ収録されています。まるで全米のコンサートホールを巡る「名所×名曲ツアー」に参加しているかのような体験が、あなたを待っています。ここでは、その中でも特に象徴的なパフォーマンスをいくつかご紹介します。
The Music Never Stopped – Live at Philadelphia Spectrum, Philadelphia, PA, 5/13/1978
アルバムのタイトルにもなっているこの曲は、旅の始まりを告げるファンファーレのようです。1978年フィラデルフィアでの演奏は、活気あるギターリフと弾むようなリズムが、オーディエンスの熱気をダイレクトに伝えてくれます。バンドと聴衆が一体となってグルーヴを生み出していく、ライブならではの高揚感を存分に味わえる一曲です。
Scarlet Begonias – Live at Greek Theatre, Berkeley, CA 7/13/1984
Grateful Deadのライブの醍醐味といえば、曲と曲が境目なく繋がっていく伝説的なジャムコンボです。1984年バークレーでのこの演奏は、その代表格。サイケデリックな浮遊感とジャズのようなスリリングな即興性が交錯し、魂が震えるような音楽的体験へと誘います。この一連の流れに身を任せれば、きっと鳥肌が立つはずです。
Truckin’ – Live at Deer Creek Music Center, Noblesville, IN 7/15/1989
「What a long, strange trip it’s been（なんて長くて奇妙な旅だったんだろう）」
という歌詞でも知られるバンドの代表曲。1989年インディアナでのこの演奏は、歌詞と演奏が完全に一体となった熱狂的なパフォーマンスです。バンドが歩んできた「旅」そのものを歌うこの曲を、大観衆の歓声の中で体験する感覚は格別です。
その他にも、サンフランシスコのサイケデリックシーンの中心地であったWinterlandやFillmore、ロックの殿堂Madison Square Gardenなど、歴史的な名所での演奏がずらり。それぞれの土地が持つエネルギーとバンドの即興性が化学反応を起こす様を、リアルに感じ取ることができます。
コレクター向け案内｜完全体は60枚組ボックス『Enjoying the Ride』
もしこの『The Music Never Stopped』でGrateful Deadの旅の魅力に憑りつかれてしまったなら、その先にはさらに深く、広大な世界が広がっています。
本作の元となった完全版、60枚組CDボックスセット『Enjoying the Ride』は、全20会場のコンサートをまるごと、約450曲収録した究極のコレクターズアイテムです。限定6,000部、価格は約600ドルと高額ですが、詳細な解説書や未発表音源がもたらす重厚なコレクション体験は、何物にも代えがたい価値があります。
※中々入手しづらいですが…
FAQ｜よくある質問
Q. 収録されている年代や会場はどのようなものですか？
A. 1969年から1994年までの、バンドのキャリアを網羅する25年間から選ばれています。フィルモア・ウェストやウィンターランド、マディソン・スクエア・ガーデンといった、米国内の歴史的な20会場での名演をセレクトしています。
Q. Grateful Deadのライブは即興が多いと聞きますが、初心者でも楽しめますか？
A. もちろんです。むしろ、即興演奏の予測不能なスリルや、その場で生まれるエネルギーこそが、理屈を超えて「ライブって楽しい！」と感じさせてくれます。本作は、そんなライブ体験を直感的に伝え、誰でも深く楽しめるように厳選された入門編として最適です。
Q. CDとLP、どちらのフォーマットを選ぶべきですか？
A. これはあなたの音楽の楽しみ方次第です。手軽さを重視するならCD版、所有する喜び、じっくりと音楽に向き合う時間を大切にしたいならLP版がおすすめです。あなたの生活スタイルや好みに合わせて選びましょう。
さあ、あなたも「終わらない旅」へ
この『The Music Never Stopped (Live)』は、Grateful Deadというバンドが50年以上にわたって続けてきた、長くて奇妙で、そして素晴らしい旅の魅力を凝縮した最高のスナップショットです。
彼らの音楽は、単に聴くものではなく、「体験」するもの。まずはこのアルバムで、その旅の第一歩を踏み出してみませんか？針を落とし、あるいは再生ボタンを押した瞬間から、あなたの旅が始まります。
24歳。ニセモノ。
理論物理学の研究をしたり。
音楽の持つ豊かな感情の襞を愛し、その根源にある普遍的な響きを探求しています。
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